すとん

2023.05.06

五月の芝の上は

賑やかな人だかりだ

 

球は放たれて

まっすぐに転げ

約束したように

穴に落ちてゆく

 

また約束通りに

ひとは老いてゆく

 

老いて

ちいさな暗い穴に

すとん、

と球を落とす

 

影が横切ると

そのたびに現れる

無数の

薄紫色の花

 

一足

歩くごとに

十も、二十も

踏み敷かれる

 

皮膚の表面を

走査する日差しも

何万の底無しのあらゆる穴の中に

光の球を垂直に転がしてくる

 

すとん、

すとん、すとん、すとん、すとん、

と、一つ外すことなく確かな軌道で

落ち続けてくる