こだま

2021.10.20

檜のにおいではなく

にんげんの尿のにおいだった

 

時間の経過によってか

誰かそこにいたひとたちの空気が淀み

消えた者が⽴ち現れてくる

 

あなたはおおきな愛を求めるひとだ

流し込み流し込んでも

湯の溜まらない⽳の空いた乾⾵呂だ

 

浴槽の底は落ち葉に撒かれて

ガラス窓は⽔垢に⽩く曇り

はいて、ふいて

⻄陽に焼かれながら

拭えない汚れを何度も擦る

 

賄えよ

⽇々の⾷い扶持も

こどもらの暮らし、愛くらい

じぶん⾃⾝で賄え

賄え、と

 

重たい地下の⻑い廊下に

こだましてくる声