向こう側の木

2024.09.19

鉄線をくぐり抜けて

道路に飛び出すには

液体になるしかなかった

 

コンクリートの上を

這って、しばし木であることに

捉われない自由な存在に

なる、そうできると

それは信じた姿だ

 

小高い丘に立って見渡せば

港に向かって少し内側に

野良のしっぽのように短く曲がっている岬

 

じぶんは人間、

だと思い込んでいるために

未だ飛べないだけなのだ

羽を背中に収納したままそれを肩甲骨だとして

鳥でもあるはずの浮力を発動させないで

生きてきただけなのだ

 

生きる以外、選択肢の無い自然の中で問いかければ

木は木の姿を留めず

人は人のかたち通りに生存しているだけであると我に返して

足ではない器官で歩み、翼ではないものであってもはばたかせて

道の向こう側、

水平線の向こうへもゆくことができるのだと

いま、体現してみせる