道標
2023.02.06
山も海もなりふり構わずはみ出していく道に
ひと、ひとりふたり歩いた痕跡と
坂で待ち伏せをしている黄金の木の実
参拝者のいない御室を過ぎるいっそう冷たい風
石仏がだんまりと見下ろしてくる
葉裏の乱反射の隙間に女の屍のような白さ
もしくは、乾いた巨きな大腿骨
薄く乳の滲み出る岩肌のいつかの流動体は
エメラルドの水辺でそっと息を止めた
あの立ち入ることを拒む浜へと続く
一筋の細道
それは、ここを降りることと
降りないことの二つの分かれ道
前進可能な場所へと縫い込んでゆくもの
指の根の揃った数の当たり前など一切問わずに
生命のままに貫いてくる
西陽はもうじき何にも阻まれない姿で
斜面も崖をもあらあらあらと笑い滑り降りて
裸んぼうの海に溶け込んでゆく