太陽になった月 2022.11.08 欠けた月がひとつふたつ咳をして竹の梢に払われる もしも今夜空を吸い込んだ肺の中がブタクサやセイタカアワダチソウの花粉でいっぱいでそこに翅の割れたアゲハや腹の大きな蜘蛛無数の蟻たちが群がっているのなら枯れた荒野原であっても焼き払うことなく静かな蟲の寝床であろうと思う 時折幽かに瞬く蟋蟀のシグナルと 海の胸郭よりこだましてくる声の影法師 雲ひとつない空のいい天気なのです