町は還る

2022.10.10

岬の瘡蓋となった

屋根屋根

の錆色と

豆電球の

 

古い家屋のにおいが

湿った路地に流れ込み

取り留めないテレビの音が

右からか、左からか

墓からなのか

多方より聞こえてくる

 

種を選ばず凡ゆる葉を纏う

草の壁

根の、血管の、巨きな半人工石

人の記憶を喰うている木々

 

余命の花を結ぶ

朝顔の残りの色が

家々の

隙間という隙間を灯し

 

また、割れた鉢や

壺の奥の窓の、

皺だらけの

敷かれたままのシーツが

窓硝子に顔を張り付けている

 

誰か、

水かの

気配だろうか