訪ううみ

2022.08.12

とおく沖より

巨きなすがたの

白無垢を着たものの

 

前かがみに

顔を隠し

ゆっくりと

海を渡ってゆく

 

南西より

北東の方へゆくようだが

相模の海を通り過ぎるまえに

陸の境目など知らず

息も切らさず

山の背を

しずかに上ってくる

 

低く幾度か唸り

真昼の熱を瞬時に吹き飛ばして

できたばかりの清められた

雨粒を

惜しみなく撒いてゆく

 

高い空に鳥の塊がある,

老夫が見上げ

つられると

色とりどりの群

 

飛び立った彼方の岸は

もう

秋なのだろう