六月の撓雪

2022.06.14

涙と同じ味の濁りの海で

たくさんの房が生る

 

黒く平たい姿であったものは

水に浸されると

それを食するにんげんよりも

はるかに優美な半透明体となって

薄明かりのなか

対となり

寄り添う

 

360度の視野で世界が見られたら

隣に在るひとを

何からも

守れるだろうか

 

からだの隙間より溢れ出す海の水は

悲しみの味ではなく

あらゆる滋味の溶け込んだ

いのち生まれる羊水になる

 

その底に沈んだ槙の一枝に

今夜

白いやわらかな

雪を束ねる