山桜

2022.04.17

海の

素顔をした陽に

焼けた

黒い背中に

 

透き通るほどの白い

山桜の花びらが

散る

 

背を向けた

そばかす模様の

丸い山は

 

顔の無い

小さな女の子を

抱いている

 

生き別れたひとは

死びとよりも

遠く

及ばない星だ

 

春の

この夜空を

何度、繰り返し

通りすぎただろうか

 

ふたたび

付けられた名は

まだ少し斜めになって

その胸に

掛かってはいるが

 

長い間の

きみの孤独にいま

桜は

絶え間なく

降り積もる

 

こぼれ落ちるほどの

眩しい

よろこびよ

 

どこまでも膨らんで

膨らみ、続けて

きみを

満たせ

 

季節に隠れて

見えなかった姿に

花は

天より

降り立って

 

ようやく

きみに

立ち現れてくる