砂浜の⼩⽯を拾うように
さまよいながら
何かうつくしいものを探している

こころに浮かびあがるものを
つまみあげては
ポケットにしまいこむ

並べればひとつのうた
ひとかけらの景⾊が
みえてくる

『渚』

神奈川県の西、相模湾に少しだけ突き出た半島にある小さな港町。月に一度、月が満ちる頃に、この海辺の町の詩が詠われます。

人口一万人にも満たない神奈川県で2番目に小さなこの町は、豊かな自然と地形に沿った町並みがみせる長閑で美しい風景があります。その風景を形づくるのは、自然だけではなく、そこに住む人、その人たちの営みです。

息遣い、手触り、日々の営みの喜びや憂い、人のつながりの豊かさや息苦しさといった感覚的なものが、その町をより深く知るためのきっかけをくれるはずです。

海辺の町の詩に触れて、風景に、営みに、想いを巡らせてみてください。そして、その想いと詩と共に、真鶴町を歩いてください。きっと町とあなたの対話を生んでくれるはずです。

真鶴町について

神奈川県西端に位置する人口7000人ほどの小さな港町には不思議な魅力があります。

江戸時代の植林にはじまり、明治期には天皇の御料林として守られてきた真鶴半島の照葉樹の森「お林」。相模湾と相模灘に面したふたつの海は、お林を守ることで自然の海岸線が保たれ、「魚付き保安林」として豊かな恵みを与えてくれます。この緑と海が一体となった自然の風景はかけがえのない真鶴の宝です。

港に向かってすり鉢状に広がる斜面地に肩を寄せ合うように立ち並ぶ家々。その家並みの間を縫うように伸びる路地「背戸道」は、真鶴のアイコンとも言える風景です。この真鶴の風景は、1994年に施行された通称「美の条例」と呼ばれるまちづくり条例によって守り育てられてきたものです。

この町の豊かな自然環境と特有の街並みは、日々の営みや地場産業と密接に結びついています。当たり前のことですが、真鶴の風景は真鶴の日常の上に成り立っているのです。この生活風景の美しさを称える真鶴町は、目まぐるしく変化する今日において、見る人の目にどのように映るのでしょうか。

プロジェクトのメンバー

清中 愛子

詩人 / アーティスト

⾝近な⽇常⽣活の中にある違和感や⼈々の姿、多様な家族の在り⽅を詩に描く。
近年は海の環境に関わるアートプロジェクトを通じて、海や⾃然を題材にした作品も多い。
また、詩集の装丁に使⽤する紙素材からの制作や、詩と併せたオブジェ、フォトコラージュ等の制作もしている。
実際の体験、場所や⼈への取材を通して書くこと、また異分野への横断をしていく詩作活動を⼤切にしたいと考えている。
真鶴町を拠点に活動。

◯詩集
『宮の前キャンプからの報告』

◯受賞
三田文学新人賞坂手洋二奨励賞、永瀬清子現代詩賞、文芸思潮現代詩賞大賞、Canon写真新世紀第27回 佳作入賞、中原中也賞最終候補ノミネート

◯近々の活動予定
・Tara Jambio Art Project 作品展示(香川県 / 粟島)2021 年秋頃を予定。
・ユリイカ2021 年8⽉号(⻘⼟社)に詩の寄稿

愛媛県出身。
東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒。

鈴木 大輔

グラフィックデザイナー

1993年神奈川県生まれ。DOTMARKS主宰。神奈川県の西端・真鶴町を拠点として、主に地域産業に関わるプロジェクトに参加。
本プロジェクトでは、ウェブサイトのデザイン、実装を担当。
最近の仕事に、雑誌「日常」(日本まちやど協会)、「小さな泊まれる出版社」(真鶴出版)など。
https://dotmarks.jp/

平井 宏典

ディレクター

1979年、神奈川生まれ。
真鶴生まれ真鶴育ちの経営学者。アートビジネスの研究を専門とし、地域のアートプロジェクトのディレクションなども行っている。
真鶴まちなーれ2014・2016・2017・2019、下町ワンダートリップ2018@三浦、おだわら城町芸術祭2022のディレクター、公募作品の審査やアートプロジェクトスクールの講師など。
本プロジェクトでは、企画立案や全体のディレクションを担当している。

※白地図は国土地理院(https://maps.gsi.go.jp/)のものをもとに作成